日常の巻
2017年05月10日
嗚呼、旅に出たし。
もうかれこれ2年以上は日本から出ていない。
なぜ海外なのか?
海外への一人旅は、私にとって一つの「リセット」だ。
リセットなんていうと、どうしてもマイナスイメージが先行してしまうが
私の場合はこれ以上ないほどにプラス思考である。
人間というのは傲慢なもので、自分を取り巻く環境や日常に慣れてしまうと
まるで自分がすべてを知った風に勘違いし、思い上がってしまうものだ。
まぁ少し大袈裟ではあるが、とにかく慢心は人の成長を阻害するといっても過言ではない。
言葉も通じず、文化も違い、何なら命の価値でさえ違う場所。
そんな異国の地へ、それも一人っきりで踏み出せば
その不遜な慢心は否応なく砕け散り、怖気づき、ときに自分の情けなさに立ち尽くす。
普遍的な日常の中にいれば、なかなかそんな経験はできるものではない。
傍から見れば無意味な行動だとは思うが、私はそういった瞬間が好きである。
そんな瞬間にこそ、妙な高揚を覚える。
一線を越えると本当に身ぐるみ剥がされ殺されるのがオチではあるが
その線引きをしながら、純粋に冒険を楽しむ。
アドレナリンがジリジリと毛穴から吹き出し、動悸が激しくなる。
国内の旅ではなかなか味わえない感覚。
それが私にとって「一人旅の在り方」だ。
よく世間じゃ「自分探しの旅」なんて言うが、そんな輝かしいものではない。
一人旅を通して見つかる自分なんてものは、ただ単に今まで「見ないように」してきた自分である。
自身を偽り欺いてきた何かが、突如として目の前に現れる。
ほんの少し「日常」から外れるだけで、人はこんなにも蚤のように小さく震えることがあるのかと
到底口では表現しようのない無情が胸にどっしりと圧し掛かる。
こんなことを繰り返していると、日常の中で起こるトラブルや悩みなど
大抵は馬鹿らしくて笑って過ごせるのである。