清涼の巻
2015年09月14日
穏やかに流れる雲の向こうで
秋麗な空が広がっている。
落日ともなればそれは
熟れた無花果の果肉のように生々しく紅い。
生命の息吹、大地の鼓動。
美しく燃え上がる。
幽暗の巻
2015年09月09日
ふと目を覚まして
窓の向こうが薄暗くあったときなんかは
えも言われぬ感情に苛まれるものだ。
それが白み始めた朝であっても
暮れ始めた夕刻であっても
妙な寂しさが胸を埋め尽くしてゆく。
その鈍重な暗がりに怯えるようにまた静かに目を瞑ると
今度は朗らかな安堵感が私を包んでゆく。
そういう瞬間にこそ、小さな幸せなんてものを垣間見たりする。
明暗の巻
2015年09月03日
夕涼みの、ほんの僅かな明暗の中で
残暑の匂いが行き場なくわだかまる。
進むことも退くことも恐れているように
それはただその場で悶々と夜風を待っているのだ。
夜風にさらわれてしまえば、何の気概も持たずフッと消え去れることが出きる。
誰の目にも留まらず、誰の記憶にも残らず
まるでそこには何もなかったかのようにゼロになれる。
人生は風雲の如し。