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ウッシーのコラム

井戸の巻

2014年02月22日

小学時代に暮らしていた家の裏には古びた井戸があった。
いつもずしりと重そうな石蓋で閉じられ、子供ながらに中の様子が気になっていた。
夏の盛りが過ぎ、夕方になると涼しい風が寂しく足元を通り抜けるような頃だった。
ふと井戸を見るとこの石蓋が外されていて、その大きな口がぱっくりと開いている。
私は抑えきれない興奮とともに駆け寄ってみたが
あれほど中が気になっていたにも関わらず、井戸の前に立つことを躊躇した。
私はなぜか中を見ることが急に怖くなった。
近所の友人を呼びに行き、また再び戻ってきた頃にはすでに石蓋が乗せられていた。
それから私が随分と大きくなり、結局その家を引っ越すまで井戸が口を開けることはなかった。
大人にな った今、映像や写真で井戸を見るたび当時の記憶が鮮明に蘇ってくる。
あの仄暗く湿った空気がべったりと張り付くような感覚が今でも首筋に残っている。
心霊とかそういった類の話ではないのだが
あの時のことを思い出すと今でも妙な胸騒ぎがして鳥肌が立つ。
それと同時に、今になってもう一度あの場所を訪れたいという思いもある。
子供の頃に過ごした場所には、子供の頃の自分がいるだろうか。
遠く忘れ去られた小さな過去の中には
何か今の自分への大切なメッセージが埋まっているのかもしれない。