JUG A BILLY CATS

BLOG

ウッシーのコラム

​【旅日記】タイのソンクラーン編

2013年11月12日

4月12日。
バンコクへ降り立ったのは、夜の9時頃であった。
鬱陶しく蒸し返す熱気で、少しの息苦しさを覚えた。
タイの一年の中でも最も暑い時期で、立っているだけで滝のように汗が吹き出てくる。
なぜ、わざわざそんな時期にタイにいるのか。
まずは事の発端を前置きしておくことにしよう。
『ソンクラーンって知ってる?』
唐突に話しかけてきたのは、同じゲストハウスに泊まっているイタリア人女性だった。
使い古したモップのようなドレッドヘアを指で遊ばせながら
『ウォーターフェスティバルよ。知らないの?』と
まだ20歳そこらの私に、辿辿しい英語の中にも皮肉がハッキリと分かるように言った。
実際、私はそれを知らなかった。
ソンクラーンが『水かけ祭り』という有名な祭りだと分かったのは
日本に戻ってそれから暫くしてからだった。
それはタイの旧正月に行われる祭りのことで
毎年4月の13日から15日までの3日間、ただひらすらに水を掛け合うという何とも
原始的かつクレイジーなフェスティバルがあるのだという。
義務感にも似た欲望がスーッと私の中を満たしていくのが分かった。
刺激に飢えていた若き青年を動かすには十分すぎる魅力がその『祭り』にはあった。
そして翌年の4月12日、一年で最も暑い時期にわざわざバンコクで過ごすに至る。
『ハロー!』という叫び声と同時にバケツいっぱいの水を頭からかけられた。
ソンクラーン当日の朝、コンビ二へ向かおうと宿の玄関を出たところであった。
参った。
頭の天辺から爪先までプールにでも飛び込んだようにズブ濡れだ。
一瞬ワケが分からず、横を見るとバケツを持った地元の兄ちゃんがゲラゲラと手を叩いて笑っている。
このソンクラーンというものを、どうやら私は大きく勘違いしていたようだ。
ただ単に『ソンクラーン』というフェスティバルが開催されるのだとばかり思っていた。
しかし違っていた。
この3日間は、24時間ずっとソンクラーンなのだ。
日本の正月のように、多くの店はシャッターを下ろしている。
コンビ二は営業しているものの、商品棚はビニールシートで覆われている。
レジの女の子の髪の毛からはポタポタと水が滴っていた。
そしてズブ濡れの私を見てクスクスと笑った。
バスの運転手も乗客も、バイクに乗っている人も
ただ買い物に行く途中の人も、もちろん観光客も
屋外にいる全員がズブ濡れであることに気付いた頃
私はようやく全てを受け入れることができたのだった。
大通りへ出てみれば、もう何処もかしこも水浸しで
10メートル進む度にバケツで水をかけられる始末だった。
これはもう早めに『かけられる側』ではなく『かける側』に回らねばと
さりげなく地元民に混じってバケツをゲットした次第である。
異文化というものは、テレビや雑誌で見ているだけでは到底理解が出来るものではない。
異文化を理解する必要性を問われればそれは分からないが
我々が許容し難い文化が世界中にはまだまだ山のように溢れている。
そんな 世界に存在する様々な文化に飛び込み体験することが
人生において何かとてつもなく大きな意味を齎すものだと私は信じてやまない。