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ウッシーのコラム

志賀の巻

2013年10月23日

秋雨はしっとりと夜を濡らして、幽かな月の明るみが雲間でざわめいている。
こういった叙情漂う秋の夜長は、甘菓子をつまみながら映画を観るに限る。
小説を読み耽るのもよいが、雨樋を伝う雨の音一つ一つが妙に気になりだして
浮わついた心がどんどん肥大してはパンッと弾けたかと思うと
ついには小説も放り出して潤んだ窓の外を眺めながら物想いに耽るというパターンが多い。
おかげで、本棚には読みかけの小説ばかりがズラリと並んでいる。
そして読み終える前にまた新しい小説を買ってしまうのだからどうしようもない。
今現在、志賀直哉の暗夜行路にリベンジしている。というのも
この暗夜行路だけは、これまで十数回は読み返しているというのに、未だに読破した試しがない。
志賀直哉の生涯最高傑作だと言われ、『オススメの小説』とプッシュされることは多いが
まったくとんでもない。
まずハッキリ言って、内容がつまらない。
寝食も忘れて読み耽るというような面白みはそこにはない。
しかし、至るところに散りばめられた屈託のない文体の美しさは
もう小説の内容など凌駕してしまうほどで、目を見張るものがある。
だからいつもページをめくる度に『この言い回しは素敵だなぁ』なんて
何度も立ち止まっては読み返すために、内容など頭に入ってこないのだ。
何より私のような若造では 、理解できるほど人生経験が足りないようでもある。
三島のようなしつこいほどの華美表現も面白くはあるが
志賀みたく誰でも分かる言葉で簡潔に伝えるのもまた面白い。
今回も途中で音を上げそうな予感こそするものの
まぁその時は『まだまだ成長が足りない』と来秋に持ち越そうではないか。